Geopark
release
Geopark
  • 01. Prologue...
  • 02. Dinosaur Dance
  • 03. 故郷
  • 04. Salamander
  • 05. ⽇⽇是好⽇
  • 06. ...Epilogue


DIGITAL

movie

profile

三浦拓也(ミウラタクヤ)
1983年、兵庫県神戶市出身。
2002年ギターインストゥルメンタルユニット DEPAPEPE(デパペペ)として活動をスタート。
2005年メジャーデビュー。 インストゥルメンタルのアーティストのデ ビュー作品としては、日本音楽史上初の”オリ コンベスト10”にランクイン 、第20回日本 ゴールドディスク大賞にてW受賞に輝く。
アジア各国、フランスやアメリカなど国境を超えてコンサートを行ない、タイでは3000人、インドネシアでは10000人以上もの観客を動員するなど海外での強さも感じられる。
2021年には、恐竜好きが高じ(恐竜発掘の名所として知られる)福井県観光PRのテーマソングを提供。
卓越したギターテクニックに裏打ちされた情緒溢れるメロディセンスとアレンジが高く評価され、
楽曲提供やアレンジ、多くのミュージシャンとのセッション参加など幅広く活動中。
2023年6月には三浦拓也(DEPAPEPE)ソロワークとしては初となる配信限定EP「Geopark」を発売する。

interview特設サイトでは三浦にインタビューを行い「Geopark」のコンセプトから楽曲の制作エピソード、アルバムに込めたこだわりを語ってもらった
Geoparkというタイトルでようやく締まりました
——まず、ソロで初となるEPを作ろうと思った経緯から聞かせてください。
DEPAPEPEが9枚目のアルバム『Seek』を作ったのがちょうどコロナ禍になる直前の2020年だったんですけど
——15周年イヤーでした。2020年4月にリリースされて。
そうそう。その後、すぐコロナ禍になって。みんなで集まって何かをするということができなくなったので、その間に何かできないかなと思って。それで曲作りのネタみたいなのをたくさん作ってたんです。元々曲作りはしていたけど、2020年ぐらいから、日々のスケッチみたいな曲を作って溜めるようになって。その中でDEPAPEPEとはまた違う要素のフレーズやネタ、曲が出来てきたので、いつか形にしたいなと思ってたんです。
——結成から21年、デビューからは18年目に入りますが、三浦さんが感じるDEPAPEPEとの違いというのは?
曲の雰囲気もそうなんですけど、一人で作るので、DTM(パソコンで作るデスクトップミュージックのこと)とか、ギター以外でも本格的に曲作りを始めたことが影響してるんじゃないかなって思います。今回はあくまで自分のアルバムということで、ギターでメロディー弾いてるんですけどね。
——そこも気になってたんです。例えば、エレキギターのインストアルバムを作るとか、DEPAPEPEとは全く異なるアプローチをすることもできますよね。三浦さんはラップもできますし。
(笑)あはははは
——でも、やっぱりメインはアコギでしたか?
そうですね。アコースティックギターのデュオのギタリストだっていうイメージもあるので、ギターを弾きながら、できる楽曲を選んでいったっていう感じでした。『Dinosaur Dance』と『故郷(ふるさと)』は一人で出るライブのセッションとかでもよくやっていて。結構、昔からある曲なので、アコギで作ってからアレンジしたんですけど、『Prologe…』『Salamander』『日日是好日』『…Epilogue』の4曲はDTMで作ってから、ギターをレコーディングした感じです。
——どんなアルバムにしたいと思ってましたか?
まずは、ずっと音源化したかった『Dinosaur Dance』は絶対入れたい!と思って。あとは、『故郷(ふるさと)』と『Salamander』はライブでもよくやっていて「いいね」と言ってくれる方も多かったので最初に候補に入れました。この3曲でバラエティーに富んでるというか、いろんな世界観があるので、これを1つにまとめれるように、『Prologue…』『…Epilogue』『日日是好日』を作っていきましたね。
普段、人と合わせることの喜びが多い分、全部一人でやり切る
——タイトルは最後に付けましたか?
はい。曲タイトルは既存曲とか、制作中に決めてたんですけど、最後に『Geopark』というアルバムタイトルを思いついて、ようやく締まりました。
『Dinosaur Dance』が中生代。『故郷(ふるさと)』は田園風景でのどかな人々の暮らし。『Salamander』は都会っていうほどじゃないけど街中の雑踏で、『日日是好日』は(上記の3箇所を巡る)散歩の曲にしたかったんです。
アルバム全体を通して生活音や環境音をサンプリングして音源としてはまとまっていたんですが、さらにそこから、自分の頭の中で見えているこのエリア一体の景観を一言で表している『Geopark』に辿り着いてやっと収まりました。
——場所場所で足音が入ってますね。
そうそう。いろんな場面を歩いてるんです。さっきも話したように、全部にちょっとずつ生活音のサンプリングこっそり入れたりして、統一感を持たせていて。最初は『日常』っていうタイトル案もあったんですよ。でも、日常に恐竜はおらんしなって悩んで(笑)。いろいろと考えて、『Geopark』だと、地球や大地の歴史も学べる場所みたいな意味もあるので、三浦拓也の頭の中にあるジオパークを感じてもらえて、プロローグからどんどん遡ったところから未来へつながっていくみたいなのが見えるといいかなと思って作りました。
——これは、全部自分でやってるんですか?
はい、今回テーマがあって。
DEPAPEPEは2人組なので、2人で作る。もしくは、他のプレイヤーの方と一緒に作っていくっていう、人と合わせることの喜びが多いので、今回のアルバムでDEPAPEPEとは違うものを出すんであれば、全部1人でやり切るっていうのは、一つのテーマとして面白いなと思って。だから、この楽曲たちを尊敬できる方とやるっていうのももちろんできるし、ソロアルバム作ろうと思ってるって言ったときに、「参加するよ!」って言ってくれる先輩もいっぱいいたんですけど・・・
——そうですよね。
それはめちゃめちゃ嬉しいことで本当に生意気なんですけど、今回は、1人だけでやり切るっていう方が色があっていいかなと思って。
——弦やマリンバとかも?
全部、自分で打ち込んでます。
——ちょっと生っぽく感じました。
本当ですか! 頑張って打ち込んだから、それはすごく嬉しいですね。このコロナ禍では、アニメ『白い砂のアクアトープ』の劇伴もやらせてもらって。そのときに、ギター以外の楽器を使ったり、ストリングスアレンジもやったんです。特に『Prologue…』は序章感をつけたかったんですよね。恐竜の世界に誘うみたいな。
——鳥の鳴き声から始まりますよね。
それも自分で録ってきました。既存の素材も混ぜたりしたんですけど、フィールドレコーディングもたくさんしましたね
——まさに、三浦拓也のジオパークの入り口に立ったというオープニング感があります。
ガットギターのフレーズで太古の世界観を表現してて。そこからストリングスの弦の主題にバトンタッチして、次に繋げるみたいなのが構想で。DTMで全部作って、それを生に差し替えていきました。
琥珀星は人間目線、Dinosaur Danceは恐竜目線
——そこから、『Dinosaur Dance』ですよね。随分前からある曲のような気がしますけど、最初に作ったのはいつ頃ですか?
メインギターに恐竜モチーフのインレイを入れたのが2007年で、2012年9月にはデモを作ってましたね。恐竜が好きで、ずっと懲りずに恐竜の話をしてきて。満を辞して、やっと恐竜っていう名前がついた曲を出せるんですよ(笑)嬉しいです。
——(笑)先んじて、DEPAPEPEとしては、恐竜博物館がある福井県の観光連盟”Discovery in Fukui~Fukui Prefectural Dinosaur Museum~”のテーマソング『琥珀星』を2021年11月に配信リリースしてます。
『琥珀星』は太古にタイムスリップしたいなという人の目線からの曲なんです。メロディーにも切なさがあって、人間の感情が入ってると思うんですけど、『Dinosaur Dance』はもっと恐竜の世界を表現してる、恐竜目線な気がしますね
——10年前になりますけど、作った時のことを覚えてます?
最初にリフのフレーズを作ったんですよね。何回か様変わりしたけど、2020年ぐらいから本格的にDTMでいろんなパターンでデモを作ってみて。オーケストレーションバージョンを作ったし、もっとドラムが入ってるバンドバージョンとか、エレキギターだけを弾いてるバージョンとか、いろんなバージョンを作ってて。ただ、太古の生き物感が一番入るのは今回のバージョンですね。
——恐竜が歩いてる様子が伝わってきます。
嬉しいです。いろんな恐竜たちが出てきていて。最初の方はイメージとして肉食恐竜がわさわさいるような。湿度が高い少しじめっとした感じなんですけど、サビの部分は明るい感じになってるので、もっと俯瞰で見て、広い大地にたくさんの恐竜たちが謳歌してるイメージして作りました。
——間奏の部分からエレキギターが出てきます。
エレキ主体ではなくて、アコースティックギター主体の中にエレキが寄り添うようなアレンジにしたいなと思って作ったのが今回のパターンですね。アコギ2種類とエレキギターを使ってるんですけど、ソロのエレキは、ワウを踏みながら、オートワウをかけているので、ギターソロっていうよりかは、恐竜が喋ってるイメージ。あと、この楽曲はエレキもいいんですけど、生物感を出すためにはアコースティック楽器でやる方がいいかなって。だから、リズムも、ドラムスというよりかは、パーカッション主体にしたかった。
——いろんなパーカッションが入ってますよね。
面白いパーカッションで言ったら、インドネシアのダンドゥット(インドネシアのダンスミュージック)で使う<グンダン・ダンドゥット>というボンゴのような革の楽器があるんですけど、それを自分で演奏して、面白いリズムに切り刻んで、サンプリングして入れてたりします。それは、実際にインドネシア行ったときに買ってきた楽器ですね。あとは、砂の足音も自分でいろんな地面を踏んで音を作ったり。
——すごいですね。
サンプリングにもハマってしまって(笑)
自分で録りに行って、それを切って、リズムを組んでみたいなことをやってましたね
——そして、『故郷(ふるさと)』ですね。これもライブではやってる曲です。
元々はソロギターで弾ける曲を作ろうと思ったのがきっかけですね。ライブでもよく1人でやったんですけど、<ナオトインタクヤ>(ヴァイオリニストNAOTOとのユニット)でツアーを回るときに、NAOTOさんに旋律を弾いてもらったら、すごく哀愁を感じて。そのバージョンも大好きなんですけど、今回はスチール弦のアコギで全編を通していて。間奏の部分のガットギターをすごく高いポジションで弾いて素朴でかわいらしい印象にしてみました。
——そこ、ウクレレかと思いました。
ウクレレにも聴こえるし、三線にも聴こえるように、すごく高いポジションで弾いたんですよ。そこはちょっと島国の感じがいいかなと思って。
——三浦さんが『故郷』って聞いて思い浮かぶのはどんな風景でした?
僕は田園風景なんですよ。あとは、自分の故郷は神戸の六甲なんで、その辺は山のふもとですね。ただ、みんなの故郷を思い浮かべて欲しいので、あんまり限定しすぎたくなくて。だから、あえてそこのリバーブ感はちょっと薄めになってて。他が深いから、そこがちょっと素朴な音色になることで、すごく映えるんじゃないかなと思って作りました
——人間だけじゃなく、恐竜も歩いている音楽の旅ですが、次はどこへ向かいますか。
“ようこそ”という、『Prologue…』からから始まって、恐竜の世界、中生代の世界へ。続いては、“ちょっと人々の暮らしを見てみましょう”、みたいな感じで故郷を歩いて、次はもうちょっと現代に近くなりますね“人々の文化の交流を見てみましょう”ということで、街のある『Salamander』に続きます。
——どうして『Salamander』というタイトルでしたか?
連想ゲームでつけています。
ラテンミュージックのリズムの中に日本の歌謡曲を混ぜる、そういう文化交流みたいな曲を作りたかったんです。演奏はちょっとスパイス効いたみたいな感じ。イントロのアルペジオのフレーズがちょっと細かいので、そこがスパイスみたいな感じのイメージで。日本独自のスパイスないかなって探したら、“山椒”が“ジャパニーズペッパー”だったので、それはいいな、と思って。ただ、「ジャパニーズペッパー」とか、「山椒」っていうタイトルはしっくり来なかった。それにまつわる生き物いないかなと思っていたら、“山椒魚(さんしょううお)”が“サラマンダー”っていう名前だったんです。
——そうなんですね。
それは、響きも含めてかっこいいなと思って。日本独自の部分もあるし、スパイスも効いてラテンの音楽も入ってるっていう意味でつけてますね
——これも前からあった曲だったんですよね。
元々は<三角関係>(トランペッター山崎千裕とピアニスト園田涼と三浦のユニット)で、トランペットとピアノとギターで弾くように作ったんですよ。でも、このトランペットのキーは音域的に高いので、全部ギターで置き換えてもいいかなと思って。だから、『Salamander』は、ガットとスチールのデュエットみたいになってますね。
——まさにラテン歌謡になってますよね。あの手拍子は?
これはエンジニアの小沢さんが、坂本龍一さんもそれで作ってる曲があるからってハマるような音色を教えてくれて。野外のちょっとゴタゴタした少し熱い感じを出したいなと思って、工事現場の叩いてる音も録って、それでリズムを刻んで組んだりもしてます。
——街中から次は?
『Salamander』や『故郷』も現代ではありますけど、今現在、実際の自分たちが生活している街をちょっと探索してみようと散歩に出かける『日日是好日』に繋がっています。これはもう朝から起きたところから始まるみたいな感じですね
——まさに生活音をサンプリングしてます。
スリッパから始まり、靴に履き替えて、歩く音も全部作ってて。こういうのもかわいいし、楽しい感じで、穏やかで自分の好きな感じ。みんなの散歩のお供にしてほしいですね。
——効果音も全部、自分で録ったりしてるんですね。
もちろんギターも大好きで、だからこそ、DEPAPEPEではギターで表現するっていうのをずっとやってきてるんですけど、こういうこともやってみたかったんですよ。例えば、今、聞こえる窓の外で車が走る音でどんだけ音楽を作れるのかなってところにチャレンジしたくなるんですよね。だから、このEPを作ってるときは、何してても、録った方がいいんじゃないか? って、ずっと気になってました。録ってきた音を聞いて、ハマるか、ハマらへんか。ちょっと変な音が入ってるから使えん、とかもあったけど、それ含めて、すごく楽しかったですね。あと、この曲は仕掛けがいっぱいあって。この曲以外の5曲のメロディーの一部分が全部入ってるので探してみてほしいです。
——最後の『…Epilogue』はどんなイメージですか?
これまでGeoparkを巡って、街中まで歩いてきましたんで、その街の雑踏から曲は入っていきます。このジオパーク自体が地球史というか、大地の歴史を学んでいく場所と捉えるならば、『…Epilogue』はここから先の未来をどんな感じにしていくかみたいなのを想像するシーンかな。雑踏の中から音が紡ぎ出されて、それが連なっていって、最後にエレキギターも出てくるんですけど・・
——アコギ、エレキ、ストリングス、マリンバが混じっていって。
最初は打楽器も入れてたんですけど、あえて打楽器を抜いて。旋律のリズム感というのがありますけど、人によって自由に捉えてもらえるように、あまり指定しないでいった方がかっこいいかなと。
——最後はエレキをもうすぐ弾きまくりそうな直前でフェイドアウトしていきます。
そうそう。最初はアコギで入れようかなと思ったんですけど、せっかくやったらエレキでソロを弾こうかなと思って。『Dinosaur Dance』はワウをかけて、ソロっていうよりかは恐竜ぽく弾いてるので、これが自分のエレキのソロとして弾いてみました。フェードアウトするので、それはもう聞く人の皆さんのご想像におまかせします。ここから先どうなっていくのか・・・(笑)
噛み締めつつ、次に繋げる
——三浦さんご自身はここから先どうなっていくイメージですか。ソロで1枚作ってみて。
これができてね、もっといっぱい作りたいなって思ったんですよね。今回はしなかったけど、もっとチャレンジしてみたい曲調も出てきてます。それと同時に、すごく満足できる形にできたことが幸せなことだなと思います。噛み締めつつ、次へ繋げたいです。
——オーケストラやストリングスを率いた劇伴も聞きたいです。
(2022年5月に開催された)15周年ライブのオープニングも自分が書いたやつやったんです。(DEPAPEPE Official YouTubeで公開されている)
あれはストリングス全部、生で弾いてもらったやつだったので、ああいうのもまた作りたいなと思いますね。
——また、今回、DTMやサンプリングを駆使した作曲やアレンジをやってみて感じたことはありますか。
ただただ楽しかったです。『琥珀星』もDTMで大体のパターンを組んだ後に、ブラッシュアップしていったんですね。だから、コロナ禍で曲の作り方はだいぶ変わったんですけど、画面上で組んでいくのは視覚的にもわかりやすいし、ギターに置き換えるときに、手ぐせで弾いてない分、例えば運指的には行かないところもメロディーとしてはいいよねって作るから、テクニック的にも上がっていいですよね。手癖でやっちゃうと、ずっと弾きやすいことばっか行くけど、弾き慣れないことも作れちゃう。それを生で実際に自分がどうやって弾くのかは、テクニック的にもチャレンジになるので、すごい楽しかったです。
——じゃあ、これからはソロもどんどんやってくと期待していいですか。
いろんな曲を書きたいし、今も日々、曲のスケッチを作ってるんですけど、ずっと続けていきたいなって思ってます。ただ、まずは、今回、自分の頭の中のジオパークが具現化できたので、ぜひ聞いてほしいですね。長年ずっと音源化したいなと思ってたライブの定番曲もあるので、ソロのライブを見にきてくれたことある人は、あの曲かって思ってもらえるでしょうし、これをきっかけにまたライブに来てもらえたら嬉しいです。

取材・文/永堀アツオ(Interview & Text by Atsuo Nagahori)